2025年11月に日本橋三越本店で開催される「マイセン展~ハインツ・ヴェルナー教授が描いたメルヘンの世界~」に来日が予定されている国立マイセン磁器製作所のマイスター、エルケ・ダンネンベルク氏に
インタビューを行いました。ダンネンベルク氏は、ヴェルナー教授(1928-2019)の遺志を受け継ぎ「ほら吹き男爵」、「アラビアンナイト」「サマーナイト」などの絵付を任されています。絵付についての興味深い話を聞くことができましたのでインタビューをご覧ください。
▲「ほら吹き男爵」の絵付をしているダンネンベルク氏
エルケ・ダンネンベルク氏 プロフィール
Elke Dannenberg
1970年4月12日マイセン生まれ。1986年から1990年まで、国立マイセン磁器製作所の養成学校で学び、その優れた才能から、1992年、「現代人物画絵付部門」に配属され、ヴェルナー教授のデザインによる現代マイセンの絵柄を描くようになりました。ヴェルナー教授の高弟ヴォルフガング・ワックスの指導のもと、1999年から2007年まで絵柄の開発にも携わり、2010年には「マイスター」となって、後進の指導にもあたっています。ヨーロッパだけでなく、アメリカやドバイでも実演を行ない、好評を博しました。
1. ヴェルナー教授が考案した現代マイセンを象徴する図柄とされる「ほら吹き男爵」、「アラビアンナイト」「サマーナイト」などを継承しているダンネンベルクさんですが、どんな事を大切にしていますか。
エルケ・ダンネンベルク氏(以下E.D.):オリジナルに忠実に描くことがとても大切なことです。今でも描く時には、必ず手本を前に置き描いています。伝統を受け継ぐとは、絵付師がアレンジを加えることなく、原画のクオリティーを後世に伝え残していくことがまず一番重要なのです。
2.「ほら吹き男爵」の物語は100を超えると言われていますが、どんなお話、またはどの絵柄が好きですか?
E.D. ほら吹き男爵が大砲の弾に乗って空を飛ぶ壮大な奇行は、最も良く知られている絵柄と思います。「男爵は大砲の弾に乗り、包囲された街を超え敵の陣地を確認し、素早く反対向きに飛んでいく弾に乗り換えた。」というシーンを描いたもので、遠近法を用いてダイナミックに表現されています。
優しさと愛らしさと同時に非現実的な絵柄は、頭からサクランボの木が生えた鹿です。「男爵にサクランボの種を額に打たれた鹿。翌年、男爵の前に現れた鹿の額からはサクランボの木が生え、実がなっていました。男爵はそのサクランボを美味しく食べた」という内容で、とてもユーモラスだと思います。
異彩を放っている絵柄は「海底を馬で散歩している男爵」を描いたもので、海の中の魚たちが楽しそうにそれを見守っている姿も微笑ましいです。
しかし、私のお気に入りの絵柄は「首尾よくイノシシを生け捕りにした男爵が、犬のように家まで連れて行く」様子が描かれたシーンです。男爵が力強く手綱をひいている姿が面白く魅力的に感じています。
▲花瓶「ほら吹き男爵」 品番:50481/68A189
高さ:約69cm
▲大砲に乗って空を飛ぶ男爵
▲プラーク 品番:9M007/68A197
サイズ : 約26.5×26.5cm
▲サクランボの木が生えた鹿
▲ヴィドポッシュ 品番:53274/68A200
サイズ : 約18.5×20.5cm
▲マグ「イノシシ」 品番:55810/68A275
容量 : 各約310ml
3. 「ほら吹き男爵」の絵付ではどのような事を大切にしていますか、またはどんな点が難しいでしょうか。
E.D. この絵付は、しっかりとした筆数と柔らかい筆使いとの緊張感あるコントラストがある一方、全体を通して繊細なニュアンスのブルーの色合いを基調としています。またこのブルーは銅を含む顔料で、焼成工程において非常に扱いにくく、すぐに暗すぎたり明るすぎたりしてしまいます。この顔料を扱うのは大変難しくある程度の経験が必要とされています。
4.今後、挑戦してみたい作品は何かありますか。
E.D. 物語的な絵柄を磁器に展開していく上で、可能性が非常に多様なことは、私にとって特別な喜びです。フォームや色、機能、内容の相互作用には、驚きがたくさんあります。私は何か新しいテーマを取り上げてみたいと思っています。ドイツと日本の両方でよく知られている物語の豊かな宝庫から何か見つかると良いなと思っています。
5. マイセンで働くことを夢みたきっかけを教えてください。
E.D. 私は昔からずっとファンタジーあふれる絵を描くことが好きでした。マイセンの町には長い歴史と伝統もあり、祖母も母もこの町で働いていましたので、私もこの町のマイセン磁器製作所で働きたいと思いました。
6. 日本橋三越本店のマイセン展に来られるのは、2015年以来10年ぶりとなりますが、日本橋三越本店のお客様へのメッセージをお願いいたします。
E.D. 今回は、300余年の歴史と伝統をもつマイセン磁器の素晴らしさを直接皆さまにご紹介できることを大変光栄に思っています。私はこの仕事に強い情熱を持っており、自分の職業(天職)が大好きで、それは皆さまにも伝わることを願っています。
▲「サマーナイト」の絵付をしているダンネンベルク氏
【お知らせ】
マイセン展
~ハインツ・ヴェルナー教授が描いたメルヘンの世界~
11月19日(水)~11月24日(月・振替休日)
[最終日午後6時終了]
日本橋三越本店 本館7階 催物会場
今回のマイセン展では、エルケ・ダンネンベルク氏がドイツから来日し 会場で皆さまをお待ちします。
皆さまとの交流など、 楽しいひとときをお過ごしください。
色鉛筆水彩画実演のご案内
11月21日(金)~11月24日(月・振替休日)
各日 ①午前11時~ ②午後2時~ ③午後4時30分~ 各回約90分
※最終日11月24日(月・振替休日) は①②の2回のみ
※諸般の事情により、イベントが中止・変更になる場合がございます。予めご了承ください。