2025年に発表された世界限定作品の新作、プラーク「地球」を考案した、現代マイセンのトップアーティスト、ホルスト・ブレッチュナイダー氏にインタビューを行いました。ブレッチュナイダー氏は、マイセンで50年にわたり絵付部門で活躍し、現在は作品を考案するとともに顧問として後輩の指導・育成にあたっています。インタビューでは本作品の見どころや絵付、そしてパーソナルなことなども伺いました。また日本のマイセンファンの皆さまに向けて動画によるメッセージもいただきました。
▲ホルスト・ブレッチュナイダー氏
ホルスト・ブレッチュナイダー氏 プロフィール
Horst Bretschneider
1952年生まれ。1968年に国立マイン磁器製作所付属の養成学校に入学し、4年間、デッサンと磁器絵付を学びました。繊細な花絵付と果物画で頭角を現し、卒業後絵付師として活躍するだけでなくアーティストグループへの参画を許され、新しい絵柄や色彩の開発にも携わりました。現在では後進の指導を行う傍ら、芸術性の高い限定作品やユニカートにその名を残しています。
MOVIE
ホルスト・ブレッチュナイダー氏から日本のマイセンファンの皆さまへ
プラーク「地球」
世界限定50点
品番:9M014/930F84、サイズ:約40×40cm
マイセン伝統の下絵付によるコバルトブルーに、輝く星々と細かな星屑が加わり、卓越した絵付師の手で銀河のクローズアップとして描かれた「地球」。単なる芸術作品を超え、私たちが暮らすかけがえのない地球をいかに守るべきかを静かに問いかけるメッセージでもあります。
1. 長年マイセン磁器製作所で働かれていますが、この仕事を目指したきっかけや1968年にマイセン磁器製作所養成学校の試験に応募しようと思われた理由は何でしょうか。
ホルスト・ブレッチュナイダー氏(以下B.H.):若い頃から絵を描くことにとても関心があり、絵を描くことを職業にしたいと思うようになりました。1968年に行われた養成学校の試験の応募者約200名とともに、私もマイセン磁器製作所に応募しました。応募にはスケッチ画の提出があり、その第一次選考の後、約60名の若者が3日間の絵付試験のためにマイセン磁器製作所へ招かれました。最終的には27名の見習いが訓練を開始することを許され、私はその幸運な一人となりました。
2. これまでの日本でのイメージですと、ブレッチュナイダーさんは自然の花や鳥、景色を描かれることが多いように感じていますが、今回のテーマ「地球」や「銀河」を選ばれた理由をおしえてください。
B.H.私の絵付のテーマの幅は、以前からとても多岐にわたっていました。花のモチーフや鳥に始まり、最近では鯉も非常に好んで描いています。さらに風景画にも取り組んでおり、大きなプラーク「ザクセンの美しい城と庭」は、ドレスデンのノイシュタットの駅舎でご覧いただけます。私は常に新しいテーマを取り入れることが重要だと考えています。「宇宙」というテーマには、もう長年取り組んでいます。義理の息子が天文学を学んでいたため、地球の不思議や宇宙の美しさについて、いつも多くの話をしています。私はこのことを通して、私たちの惑星のもろさに注意を向けたいと思っています。私たちには、この一つの地球しかありませんから。
▲ドレスデンノイシュタットの駅舎に
壁画として掲げられている大陶板。
▲プラーク「ザクセンの美しい城と庭」
品番:9M763/934021、サイズ:約49×147cm
駅舎の壁画の大陶板の縮小版。
マイセン揺籃の地「アルブレヒト城」や古城をはじめ、アウグスト強王の命で建造された雄大な「ツヴィンガー城」、強王の愛人だったコーゼル伯爵夫人が晩年過ごした「シュトルペン城」、強王の狩の城「モーリツブルク城」、そしてドレスデン城の外壁に埋め込められたマイセン磁器の大壁画「君主の行列」など、マイセン磁器や古都マイセンの歴史を物語る名所が描かれています。
3. 私たちの地球がとても美しいブルーの濃淡で繊細に描かれていますが、その絵付や焼成の難しさを教えてください。
B.H.このプラーク「地球」は、下絵付と上絵付の非常に手間のかかる組み合わせで制作されています。下絵付の技術では、最初に素焼きの状態の磁板にブルーで背景を塗り、その後釉薬をかけて焼成します。そして上絵付で繊細な色の濃淡とディテールを描き、再度約900度で焼成を行います。この焼成後、さらに金彩による仕上げが施され、もう一度焼成されます。下絵付と上絵付の組み合わせは、絵の中でブルーの深みを生み出します。異なる絵付技法を組み合わせることは、それぞれ異なる技術を必要とし、絵付師にとって大きな挑戦となります。また焼成のたびに常にリスクが伴うので、熟練の経験が重要となります。
4. 地球以外に小惑星も描かれていますが、何か特定の星でしょうか。
B.H.宇宙を表現したかったため、地球を中心に置いて芸術的にデザインしました。そのため学術的、天文学的に正確な描写というわけではなく、小惑星もイメージによるものです。
5. 絵付デザインを考案されていますが、どんなことを大切にしていますか。
B.H.常にこれまでの絵付レパートリーにないモチーフによって、新しいテーマを生み出すことを心がけています。その際、そのアイディアを同僚たちが絵付で再現可能であることも大切です。これに対してユニカートの作品では、絵付技術や偶然性を駆使して、マイセン磁器の可能性を試すことができます。
6. 現在は主に若手の指導や育成をされていますが、これからのマイセンを担う彼・彼女たちにどのようなアドヴァイスをされていますか。
B.H.私は長年培ってきた知識を同僚たちに教えるよう努めており、彼らはいつでも私に相談することができます。特に心がけているのは、私たちの素晴らしい仕事の楽しさを伝えることです。
◀プラーク「地球」の絵付をアドヴァイスするブレッチュナイダー氏
7.お休みの日には何をされていますか、どんな事をするのが好きですか。
B.H.最近は自分の時間を自由に使うことができるようになりましたので、旅行や美術館巡り、庭仕事、ハイキング、料理などを満喫しています。そしてもちろん絵を描くことも私にとって大きな喜びです。また友人や同僚、親戚と会うことも好きです。私のモットーは「人生を楽しむこと」です。
8.日本のマイセンのファンにメッセージをお願いいたします。
B.H.マイセン磁器を愛する皆さま。私はこれまで何度も日本を訪れており、日本という国、人々、文化、食事が大好きです。アジアは磁器の発祥地であり、マイセンはヨーロッパ発の硬質磁器製作所です。私たち両国は、磁器への深い愛情と、一つひとつの作品に込められた職人技への大きな敬意によって結ばれています。6月に再び素晴らしい国である日本を訪れることができ、私の最新のプラークをご紹介するとともに、皆さまとお話しできることをとても楽しみにしています。ではまた近いうちにお会いしましょう。
ホルスト・ブレッチュナイダー
過去に行われたホルスト・ブレッチュナイダー氏のインタビュー
■2016年9月インタビュー
■2017年4月インタビュー